銀河バンク


在来工法の匠は100年安心を目指している
平成27年12月1日

子供の頃、木と共に暮らしてきたこともあり、私は、大工さんの仕事をそばで見るのが今でも好きです。
以前は、手伝わせていただきながら、お茶の時間に、いろいろ話を聞くのが楽しみでした。
親方の話は、完成すれば見ることの出来ないところの大切さや、釘を使わない技術の他、“かんな”や“のみ”の使い方、研ぎ方など、目が丸くなるような話ばかりでした。
私が、「インニッサン」を知らなかったことで、笑い合った事も懐かしい思い出です。
※インニッサン=現場でよく使われる1寸2分(36mm)×1寸3分(39mm)の細長い角材
そんな話の中に
20年、30年前に自分が手掛けた家の前を通った時、『いい家だ』と安心するが、何百棟も造って来て、“完璧だった”と自分に言える現場は一棟もない。」といった建築の難しさの話もありました。

木造注文建築では、施主さんから新築時に求められる優先順位は下記が一般的です。
(500棟以上の新築住宅プランに携わってきた私の経験による)
1. 立地
2. 価格(予算)
3. 間取りや設備
4. デザイン・コーディネート

安全・経年変化への対応災害、周辺環境変化への対応は、重要ですが構造や資材の特性等専門的で分かりにくいため、たいていの方は業者任せです。
“匠”と言われる職人さんは、親方から学んだことや、自分で得た経験を大切にし、“100年安心出来る家造り”のために、建築法制よりかなり高い安全基準を持たれていて、妥協されることはありません。
私たちは、完成すれば見えなくなる大切なところは出来るだけ詳しく情報開示します。
工事中の写真を多く残して竣工図書に添付してご安心して頂く等、そこで暮らされる人を想う“匠の心”が伝わるように心掛けています。

ヒノキの土台等、国産材を使うようになってから、現場の職人さん達は、
日本の木は、“心が和む”いい匂いがする」と言ってくれます。
住む人や近隣の方からももそんな話が聞こえてくる日を楽しみにしている私たちは、これからも“日本の風土で育った国産材“を少しでも多く使っていきたいと考えています。
私たちは、日本の森林資源の大切さを、多くの方に知っていただく努力をしてまいります。


日本の森林が危ない
平成27年11月8日

日本は、国土の約2/3が森林で、世界でも有数の森林資源大国です。
それは、埋蔵量が決まっている地下資源と違って、次世代へと継続できる資源であり、防災・環境・水資源面からも、国策として守っていかなければなりません。
日本の風土で育った木材がどれ程のものかは“法隆寺や東大寺が実証”してくれています。
しかし、平成26年4月2日付当コラムでお伝えしましたが、日本の林業は今、崩壊しようとしています。加えて、有害鳥獣食害も深刻化しています。

そんな中、市の面積の約84%が森林である養父市(兵庫県北部但馬地方)が、今、立ち上がろうとされています。(私の故郷です)
養父市(27年2月の人口24,622人)は、昨年、「国家戦略特区に指定」されました。
現在は農業先行ですが、地域再生に向けて多くの方々が林業にも真剣に取り組んでおられます。
先日、市長さん始め関係者の方々にお会いしてきましたが、「中山間地域の地方再生モデル先導役としての期待に応えたい」との志がヒシヒシと伝わってきました。
今のままでは、「地域の将来すら話せない」ほど、限界にきていることも伺いました。
以下は、養父市林業の実態と、取り組まれている内容の一部です。

養父市の 森林面積は、市全体の84%で、35,595ha(内 人工林20,947ha)です。
森林資源量は、634万m3
森林の年間成長量は、15万m3(一戸建住宅にすると約5,000戸分相当)
全体の55%が、樹齢36~55年の人口林
2013年の年間搬出木材量(実績)は、10,705m3
兵庫県の森林(民有林)の4割は、スギ ・ヒノキが占めていて、人口林では、立木の蓄積量が、毎年約100万m3え続けていますが、現在その内の2割ほどしか使われていません
近年の増加は、合板やパルプ・チップなど付加価値の低い利用によるものです。
林業継続のためには、成熟し大径化しているスギ木材の平均価格引き上げが必要です。
そのためには住宅用材に活用し、付加価値を引き上げなければなりません。
しかし現実は、木造軸組工法で梁・桁などの横架材には、価格と強度の不安から国産材はわずか7%しか使われていません
木造軸組工法の梁・桁においてスギ材は柔らかく接合強度が弱いとのイメージがあるからです。
特に、養父市は積雪が2mにも達する多雪地域が存在するため、横梁材にはマツ類が好まれます。
そこで、スギ材を多用出来る技術開発が求められるようになりました。
兵庫県では、仕口の強度を高めるため、仕口耐力の検証を進め、2年前に強度の信頼性の高い仕口開発に成功しました。

こうして生まれた“高強度梁仕口「但馬テイポス」”をご紹介します。 高強度梁仕口「但馬テイポス」

拡大

従来のプレカットでは、繊維直交方向の底面のみで耐力を受けるのに対し、
仕口形状をテーパーとすることにより、繊維方向に耐力を分散し、高強度を実現。

開発:兵庫県(特許出願済・商標登録)
[技術情報・許諾契約等に関するお問い合わせ]
兵庫県立農林水産技術総合センター森林林業技術センター TEL:0790-62-2118

養父市では、木造高層化時代に向け、中期目標ながら、CLTの実用化早期拡大にも積極的に取組まれています。
CLT=Cross Laminated Timber ・・・・・直交集成板
「斜面で育った木材の特性」再評価、「斜面を活かした搬出」コスト削減などの研究が進むことも期待したいと思います。

私たちは、養父市産木材が首都圏へ流通する道筋をつくるお手伝いをしながら、“森林の大切さ”をより多くの方々に知っていただく努力を続けてまいります。


東京都心部の空地は今・・・
平成27年10月4日

東京都心部にはコインパーキングが点在しています。
昼間の料金設定は、10分、20分単位で、100~400円くらいです。
高いようでも、満車の所が多くあります。
このような空地の多くは、建替え準備期間を利用した一時的なものです。
50年に一度建替え、建築準備期間2年が平均だとすれば、計算上4%は更地となっていることになります。そうであれば、今は、健全だと言えます。
バブル期は、都心部で急速に再開発が進められた為、そこここが虫食い状態で更地になっていました。今の3倍以上はあったような気がします。
その頃、再開発目的の地上げ屋さんグループは、高い金利で融資を受けていましたが、時間を気にしないで、出来るだけ規模を大きくしたいと考えられていました。背景には、時間が経っても地価の上昇はそれ以上という、“土地神話”の過大な思い込みがあったからです。
金利や税負担軽減のための一時的な活用は面倒だったのかも知れません。
都心の一等地の1割、2割が無駄になって行く事に気がつく人が少なかった残念な時期でした。

今の地上げ屋さんグループは、バブルの苦い経験から当時とは違っているようです。
事業者は、建築資金を自己資金で準備しておかなければけませんから、「事業期間」が重要と考え、「事業規模」は、無理のない範囲と考えています。
大きいプロジェクトは、地権者だけでなく周りの関係者も一体で行政と一緒に街造りを基本に進められることが多くなっています。
地価が安定していることも追い風になっているようで、利用されない空き地は見かけませんし苦戦しているところはあまりなさそうです。
しかし、地価が急激に上昇し続ければバブルになるでしょうし、地価の下落が続けば事業者はいなくなるでしょう。
地価が安定している今は、都市再開発のチャンスかも知れません。

一方、都市計画道路等収用の場合は違って、余程のことがなければ期間の確定はできません。そのため、昭和二十年台に「計画決定」され、現在も「事業決定」の予定すら分からないものが多くあります。数十メートルだけ終わっている地域もあります。
近隣の計画のものを含めれば、私たちに入る売地情報の1割くらいは、事業予定未定の計画道路に関係しています。
これからも、このような計画道路を「事業決定」するためには、優先順位、予算、地域の理解等、高いハードルがあり難しい問題だと思います。
「計画決定だけ」といっても、「構造」と「階数制限」を受けますから、地権者の中には、「環境が変化しているのだから、事業決定の見込みがないところは見直すべきだ。」と、行政を厳しく批判される方もおられます。
“東京は一日にして成らず”でしょうか・・